十日夜はカカシアゲの日ともいわれ、
この日、田の神は山へ帰るともいわれています。
山の神は春、こと八日のころに里に降りて、田の神となり、
秋、収穫後に山へ帰り、山の神となるという言い伝えは
全国で聞かれる伝承です。

旧暦の十月十日に、
長野県佐久地方では、十日夜の行事が
各地で行われていました。
この日をカカシアゲとか、ソメノトシトリ(案山子の年取り)といって、
田にある案山子を持ってきて庭先に立て、
鏡餅や大根・にんじんなどを供えます(タイトル画像)。

南佐久郡小海町親沢では、
現在でもこの十日夜の行事が、
子ども組の行事として行なわれています。

午後7時ころに公民館前に集合すると、
集落を二手に分けて村中をまわっていきます。
手にはワラデッポウと称される藁で作った棒を持ち、
家の庭で、
「ソーレ、トーカンヤ、トーカンヤ
アサソバキリニ、ヒルダンゴ、
ユウメシクッテ、ブッタタケ」
といって、ワラデッポウを地面に叩き付けます。
たたくことにより、
農作物を荒らす野ねずみやモグラを追い出す意味もあるといいます。

昔は「ユウメシ(夕飯)くってブッタタケ」という部分が、
「夕餅くってブッタタケ」だったといいます。
したがって、朝はそば切り、昼はダンゴ、夕は餅を食べたわけです。
カカシアゲで田の神が山へ戻る際も、
春、山の神が里に降りる際も、
どちらも餅がかかわるようです。

ちなみに、長野県内では「しょうぶたたき」といって、
十日夜と同じように、子どもたちが家々をまわって
庭の地面をブッタタク行事があります。
こちらは秋ではなく、しょうぶの出るころです。
下高井郡木島平村で行なわれています。



11月は霜降月、霜月ともいいます。
この月に行なわれた祭りを「霜月祭り」ともいいました。
そして、湯立神楽が各地で行なわれます。
奥三河の各地で行なわれる「花祭り」は、とくに知られています。

11月の第3土曜日には、愛知県北設楽郡設楽町三都橋の津島神社で
「参候祭り」が行なわれます。
これも霜月神楽のひとつで、
「なにものにてそうろう」という禰宜の問いに、
「参候、それがしは・・・・・・」と答える問答から、
この参候(さんぞうろう)祭りの名がついたといわれています。

庭の中央に据えられた湯立釜を中心に、
そのまわりに七福神が次々に出て、田楽風の演技が繰り広げられるところから、
田楽とか七福神祭りなどともよばれたといいます。

写真は福禄寿です。



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