【 NO.11 】 1999.7.11


1.赤とんぼ孵化する

 田の草取りについては、前回の情報(NO.10)で触れましたので、こことでは多くは語りませんが、この時期稗も大きくなって、本当に大変な時期になりました。
 
 稗というと、田の雑草という印象が強いのですが、かつて食量がなく、また米の収量が少なかった時代には、水口(ミナグチ)などに植えられたものです。冷たい水にも強い稗をとって食べていたのです。そう考えると、稲より強い作物という印象があります。ところが、除草剤の盛況とともに、そうした稲より強い雑草も、あまり生えなくなりました。

 さて、何度もこのページで触れてきました『田んぼの忘れもの』(宇根豊著)では、巻頭で赤とんぼに触れています。

 赤とんぼがどこで生まれているのか、稲作りをしている人でさえあまりよくわかっていないというのです。

 実は赤とんぼは田んぼで生まれているのです。この時期、水田に田の草取りに入ると、稲株にいくつものヤゴの抜け殻がついているのに気がつきます。これが赤とんぼの抜け殻なのです。

 長野県南部の水田でも、現在盛んに赤とんぼが孵化しています。よく田んぼを観察してみてください。

 なぜ稲作りをしている人でさえ、赤とんぼの生まれる場所をよく理解していないのか。宇根豊氏は、赤とんぼから目をそらせてしまうような農業の近代化思想があったと解いています。詳しくは著書をぜひご覧いただくとして、私はここでもう一つ忘れさせてしまった現象を、自ら感じ取りました。

 農家に生まれたものの、宇根氏いうところの赤とんぼの生まれる場所はよく知りませんでした。稲作を含めた近代化は、作物に対してなるべく手をかけない、ということを前提にしてきました。都会と同じ文化程度を目指した農村は、作物を工業生産されるモノと同等の扱いをすることによって、商品価してきたといえます。したがって、作物と自然のままの付き合いをしてこなかったともいえます。農業で生計を立てているわけでもない私がいろいろ批評するべきことではないでしょうが、かつての農業とはあきらかに違うのです。

 まあそれはともかく、こうして田んぼに入ることを少なくすることによって農業を近代化し、また、利潤をあげてきたため、田んぼの姿を見なかったともいえます。
 あらためて、田んぼに入ることにより、いろいろ見えてきたことは、自ら知ったことでした。

 


さあ、8月、そして9月と赤とんぼの季節になります。

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