【 NO.9 】 1999.6.1

1."生きた化石"豊年エビと貝エビ

 今年も豊年エビが田んぼに孵化しました。昨年も紹介した下伊那郡喬木村の田んぼでたくさんその姿が見られます。
 下の写真は田んぼで撮影したものです。見えにくくて申し訳ないのですが、2点の目の黒いところとすきとおった体がなんとなくわかると思います。一つの足跡のなかに30匹から50匹ぐらいいます。


  1. 主に田んぼに生息する。田んぼ以外では水路でも目にするが、田んぼで孵化したものが移動しているようだ。
  2. 卵は代かきのあと、水・温度(20度以上)・光に反応して、孵化し、急速に大きくなる。土の中の光が当たらない卵は数年の寿命があるようだ。
  3. エビは孵化して20日後から、産卵をはじめ、親は30日〜40日で寿命がつきる。したがって、急にいなくなるような印象を与える。
  4. カブトエビは土(草の芽生えも)をかき混ぜ、丸ごと飲み込み食べる。豊年エビと貝エビは、アジアカブトエビだと思われる(ほかにアメリカカブトエビがある)。
  5. 卵は秋冬を土の中で越す。
 以上は『暮らしの情報』NO.2でも紹介しましたが、宇根豊氏が著した『田んぼの忘れもの』(葦書房)記載されているカブトエビ・豊年エビ・貝エビの生態についての記述です。

 5月14日に田んぼに水を入れ田植えは5月18日でした。豊年エビが出るのを楽しみにしていたものの、よく観察していなかったため、孵化したのがいつなのかよくわかりませんでした。宇根氏の記述の30日程度の命というと、あと半月ちょっとの命でしょうか。また、宇根氏によると、土の中の光の当たらない卵は数年の寿命があるといいますから、田んぼの土の中には無数の卵がまだたくさんあるのでしょう。

 上の写真では見にくいので、ほかの入れ物に入れて撮影してみました。

左は上から見たもの、右は横から見たもの。
左側の写真で胴体と尻尾の間に黒い塊があるのが卵らしいです。
したがって左側がメス、右がオスでしょうか。


 実は上で紹介した豊年エビのたくさんいる田んぼの近くで、貝エビをたくさん発見しました。上の写真の田んぼでは貝エビが見られなかったのですが、近くの田んぼでは豊年エビもいますが、むしろ貝エビの方が多いのです。また、豊年エビも上の田んぼに生息するものは、体がすきとおっているのですが、こちらの豊年エビは黄緑がかっています。さほど大きくない1反歩ほどの田んぼが点在する所ですが、田んぼごと環境が違うようで、同じ耕作者のたんぼでも豊年エビがまったくいない田んぼもあります。どういうことなのかはよくわかりません。

 ところで、貝エビのたくさんいた田んぼで、発見した当日、除草剤をまいてしまいました。
 翌日この田んぼへ様子を見にいったところ、貝エビの姿がまったくないのです。豊年エビは数がへるどころかむしろ多くなっていたのですが、貝エビは見えないのです。恐らく死んでしまったのでしょう。どうも貝エビの方が弱いようです。泳ぎの姿を見ていても、豊年エビは元気良く泳ぐのですが、貝エビは動きは速いのですが、ふらふらしていて、気弱そうです。

 このホームページをアップした翌日、再び貝エビのたくさんいた田んぼを訪れました。
 今度はたくさんいたはずの豊年エビの姿が、まったく見えなくなってしまいました。
 除草剤がいかに水生成物に影響があったか、これでよくわかっていただけると思います。
 貝エビよりは豊年エビの方が、わずかに強い程度で、実際のところは生物を殺してしまうわけです。

 「生きた化石」ともいわれる由縁は、下記のリンク集のページにも紹介されていますが、2億年以上も前の化石が発見されており、姿が同じだといいます。
 また、豊年の予兆ともされたところから「豊年」を冠せられたとうのですから、これほど農民にとって大切な生物はいないはずなのに、知名度が低いのには驚きます。

左は貝エビとすきとおった豊年エビ、右は黄緑色の豊年エビ



 宇根氏について一言
 氏は福岡県の農業改良普及員として、稲作にかかわってきました。同書のあとがきに稲作と農業について、
確かに生産は増えた。しかし、土地は痩せ、水は汚れ、生き物は減り、安全性は薄れ、エネルギー消費は生産を上回り、風景は荒れ、地域はさびれ、そして人間として百姓仕事の充実感はなくなっていった。
(中略)
いま「近代化」を越える豊穣な生きものと理論が、ぼくの前にあり、「やっと会えたね」と笑っている。
 百姓の子どもに生まれながら百姓を継がなかったなかから、もう一度百姓に自らなり、近代化というものは何だったのかを問う姿。
 この本を読んで、生業の背景には物として生産物だけがあるのではなく、はぐくまれた過程にあった生き物との葛藤や試みが積み重なっていることがわかると思います。

 最近お役人の農業感覚は、どこか言葉に踊らされて、農村を美化しようとしています。背景にある本当の問題などとりあげずに、都会人を誘うような言葉ばかりを並べる。潰えそうな農業を救う気が本当にあるのか疑問ばかりです。

 宇根氏はこの春に日本生態学会が長野県の信州大学を会場に開かれた際に、ここに紹介した下伊那郡喬木村を訪れました。


2.いよいよメダカを外で飼う

 屋内の水槽でメダカを飼っていますが、長い間には弱くなって背曲がりが出てきます。やはり、屋内の水槽では雑菌が入ったりして長生きはしないようです。鑑賞用には水槽が一番ですが、メダカのこと、もう少し知りたいと思い、屋外でも飼うことにしました。

 発泡スチロールに田んぼの土を入れれば、水変えなどしなくてもよいと松本市のメダカの先生よりお聞きし、さっそく発泡スチロールへ田んぼの土を入れました。
 メダカはまだ少ししか入れてないでずか、水がもっと澄んできたらもう少し入れる予定です。

 豊年エビのたくさんいた田んぼから土を持ってきましたので、このままおけば来年には豊年エビも出るのでしょうか。ただし、このままの状態では水が張りっぱなしですので、豊年エビが卵の状態で孵化せずにいられるのかわかりません。もちろん、孵化してもメダカがいますので食べられてしまうでしょう。

 
「野生メダカのホームページ」
              ・・・・・・全国生息地調査実施中

「藤沢メダカの 学校をつくる会 」




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